数学A 集合と論理

必要条件・十分条件

必要条件・十分条件は(特に未解決の)問題を解く上で非常に大切な概念である. しかし教科書では形式的な扱い方が多く,また使い方が示されていないため, 生徒に本質が伝わっていないようである. ここで,本質を重視した解説と例題を紹介する.

P→Q の読み方
ふつう「PならばQ」と読む.
状況によって次のように読むと意味が通じやすい.

PのときQになる       例: x=0 → xy=0
 
PになるのはQのときに限る  例: x2+y2=0 → x=0

定義
A→P (AのときPになる)が成り立つとき
  AをPの十分条件という.
 
P→B (PになるのはBのときに限る)が成り立つとき
  BをPの必要条件という.
A,B,Pは形式的には任意の命題であるが, 本質的には,Pは真偽の判定が複雑な命題,A,Bは真偽の判定が容易な命題である.
「P→Q」が成り立つとき,
 PをQの十分条件,
 QをPの必要条件という
と定義するのは,形式的すぎる。
本質が見えないのでよくない.

 
使い方
Pを肯定的に示すときに,十分条件Aが用いられる.
十分条件の適用(modus ponens)
A→P AのときPになる
Aである
∴ P ゆえに,Pである

Pを否定的に示すときに,必要条件Bが用いられる.
必要条件の適用(modus tollens)
P→B PになるのはBのときに限る
not B Bでない
∴ not P ゆえに,Pでない

実際には,A→P,P→B は省略されることが多い。
1,2,3,4,5,6からなる6桁の数nは平方数にならない。
nの各桁の数字の和をS(n)とする。
S(n)=21 は3で割り切れる
∴ nは3で割り切れる (十分条件の適用)
S(n) は9で割り切れない
∴ nは9で割り切れない (必要条件の適用)
∴ nは平方数でない (必要条件の適用)
 
S(n)が3で割り切れる
 → nは3で割り切れる
nが9で割り切れる
 → S(n)は9で割り切れる
nが3で割り切れるとき
nが平方数
 → nは9で割り切れる

例題1
次の自然数が4で割り切れるかどうか判定し, ○(割り切れる)か×(割り切れない)で答えなさい.

自然数  判定    自然数  判定
76595  ( ) 50300  ( )
30010  ( ) 46502  ( )
29418  ( ) 93236  ( )
自然数nについての次の条件が「nが4で割り切れる」ための 必要条件であるかないか,および十分条件であるかないか, それぞれの欄に○か×で答えなさい. 両方とも○になる条件を必要十分条件という。

条件 必要条件 十分条件
nの下1桁が2で割り切れる  ( )  ( )
nの各桁の和が4で割り切れる  ( )  ( )
nの下2桁が00である  ( )  ( )
nの下1桁が4で割り切れる  ( )  ( )
nの下2桁が4で割り切れる  ( )  ( )
いずれの条件も,
「n全体を4で割って調べる」
よりも簡単に調べられる.

「下2桁が4で割り切れる」
ことが「4で割り切れる」
ための必要十分条件である
と言うが,
「4で割り切れる」ことが
「下2桁が4で割り切れる」
ための必要十分条件である
と言うのは不自然である.

 
次の自然数が4で割り切れるかどうか判定しなさい.
自然数  判定
8875132097820148334  ( )
4548629901787839506  ( )
6421582851073593700  ( )
7548087671524378967  ( )
9897138243866143272  ( )

自然数nについて,「nが8で割り切れる」ための簡単な必要十分条件を述べなさい.

例題2
m,n は2 以上の整数とする.
1×1 の大きさの正方形を4つつなげたL字形のタイルがある.
このタイルで m×n の大きさの長方形を隙間なく敷き詰められるかという問題を考える.

6×10 の場合の途中図

敷き詰められるための必要条件
面積 mn が4の倍数

問題 2×4 の長方形を敷き詰めよ.
ゆえに,2×4 の長方形で敷き詰められる大きな長方形はL字形タイルで敷き詰められる.

敷き詰められるための十分条件
m が偶数 かつ n が 4 の倍数
n が偶数 かつ m が 4 の倍数

問題 3×8 の長方形を敷き詰めよ.
ゆえに,2×4 の長方形と 3×8 の長方形で敷き詰められる大きな長方形はL字形タイルで敷き詰められる.

敷き詰められるための十分条件
n が 8 の倍数
m が 8 の倍数

上の十分条件をまとめて次のように表せる.
敷き詰められるための十分条件
面積 mn が 8 の倍数

問題 面積 mn が 4 の倍数であるが 8 の倍数でない長方形について, L字形タイルで敷き詰められないことを示せ.
 
 
ヒント: 縞模様に色分けする.

これで解決した.
敷き詰められるための必要十分条件
面積 mn が 8 の倍数
 
注: m,n は2以上である.