数学T 数と式

絶対値

絶対値について中学で学ぶが本来の意味を教えずに形式的な定義から進めているためあまり定着していない.

本来の定義

x>0 のとき x は a または +a の形をしている.
x の符号は + である.
x の絶対値は a である.
  +5
 /  \
符号  絶対値
|+5|=5
x<0 のとき x は −a の形をしている.
x の符号は − である.
x の絶対値は a である.
  −5
 /  \
符号  絶対値
|−5|=5
x=0 のとき
0 の符号は定めない.
0 の絶対値は 0 である.
便宜上,+0 や −0 と書くこともある.
|0|=0

形式的定義

x≧0 のとき
|x|=x
|+5|=+5=5
x<0 のとき
|x|=−x
|−5|=−−5=5

x<0 のとき,本来の定義では−を取り除くのに対して, 形式定義では−を付け加えるという全く逆の操作を行なう.
これが学力が低い生徒には混乱を招く元になる.

−には3つの使われ方がある

(1) 二項演算子(減法演算子)
5−3,x−y の −
(2) 負の符号(数の表現の一部)
−5 の −
(3) 単項演算子(反数演算子,すなわち符号を反転する)
−−5 の1つ目の − ,−(x+y) の −
−x の − は
x が正とわかっているときは,符号とも反数演算子とも考えられる.
x が負のとき,または正か負かきまっていないときは,反数演算子である.
(3)の使い方(というか,(2)と(3)の違い)の説明がまったくなされていない. 絶対値の形式的定義(あるいは定理)を述べる前に,この使い方を十分理解させることが大切である.